ローリー先生のメディカルトーク
子どもを産むこととB型肝炎のかかわり
ベトナム人の女性の中には、B型肝炎に感染しているという理由から子どもを産むことを断念する女性がたくさんいます。特にアジア太平洋地域においてはB型肝炎に感染する年齢が若ければ若いほど、のちのちそれが慢性化する傾向が強い、という調査結果が出ています。
1999年に日本で開かれたB型肝炎の学会では、この肝炎に感染している母親から生まれた新生児の90%あまりが同様に感染していた地域がある、との報告がありました。こうして生まれた新生児たちは何らかの手を打たない限り、慢性B型肝炎感染キャリアー(保有者)になってしまいます。母子感染によるB型肝炎の慢性化は何世代にもおよび、アジア太平洋地域では、これがもっとも一般的な感染原因とされています。ベトナムとて例外ではなく、中国と同様にB型肝炎感染者数は人口の20%にも上ります。先進国では1〜2%にすぎません。
感染の理由には、適切な検査方法や予防接種の不足の他、以下のものがあげられます。使いまわしの注射針の使用、不衛生な医療施設、避妊具を使用しない性行為、未消毒の針を使用して行われた刺青や針灸治療、家族など身近な人間との接触(例えば歯茎から出血しているものとの歯ブラシの共用など)、傷口が感染者の血液に接触した場合や、検査がきちんと行われていない輸血による感染などです。
B型肝炎の潜伏期間は長く、致命的なケースもあります。慢性の場合、それが肝硬変症、慢性の肝臓疾患、肝臓がんにつながることもあります。幸いにも感染していない方には、B型肝炎の予防接種をおすすめします。高額な予防接種ではありません。たとえ保有者であっても、子どもを生みたいと考えている方には、生後ただちに予防接種を赤ん坊に施せば大丈夫、といった朗報もあります。
ローリー・ヘイワード医師
ファミリープラクティス医院(ダイアモンドプラザ裏手)
(ベトナムスケッチ2003年6月号) |