<第十三回>
魚の土鍋煮 [Ca Kho To]
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南部風はヌックマム仕立てで色は薄め、赤唐辛子が入って彩りが豊か |
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北部風は醤油風味で色が濃くて地味め、香味野菜がたっぷり入って香りが豊か |
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今回ご紹介するのは、ベトナムの家庭料理でも非常に人気のおかず「カーコート/Ca Kho To」(Ca=魚、Kho=煮る、To=土鍋)」です。
日本料理で魚の煮物は、調味料を加えたダシ汁に魚を入れ、コトコトと煮てじっくり味を含ませて作りますが、ベトナムの魚の煮付けは全く異なる作り方をします。
この料理に使う魚ですが、ベトナムの南部や北部では川魚を中心に、中部地方の海沿いの地域などでは海の魚が好まれます。小ぶりの魚は下処理をしてそのまま、大きい魚は筒切りにしてから調理します。
特徴は、最初に魚を調味料に漬け込むこと。南部では主に魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)、北部では大豆醤油のシーザウ(Xi Dau)か、シーザウとヌックマムを混ぜてメインの味付けに使います。どちらの地方とも、きれいな茶色に仕上げるために、色付け用のカラメル(Nuoc Mau/Nuoc Duong)、砂糖などを混ぜ合わせます。魚の漬け込み時間が長い程、魚に味がしっかりしみこむというわけです。
次に南部では魚を1度フライパンなどで表面を焼きます。魚の表面のタンパク質を熱で固め、中にしみた調味料をしっかりと閉じこめるという理屈の様です。そして、焼いている間に魚の周りに付いていた調味料は水分が飛んで煮詰まり、火を入れることでヌックマムなどが香ばしく良い香りとなって、魚にからみつくのです。
一方、北部では、先に焼くことはせず、調味料に漬け込んだ魚をそのまま土鍋や鍋に移します。そして魚に旨味と油気をプラスするために、豚の脂身を少量加えることもあります。さらに鍋を火にかけて調味料を煮立たせ、魚に煮詰まった調味料をからめていきます。
その後、どちらの地方も水(南部ではココナッツジュースを使うことも)や調味料をプラスし、ゆっくりと煮詰めていきます。南部では仕上げの際に土鍋に移し、最後の煮詰めをすることが多い様です。また、魚の臭みを取るためにいっしょに煮る香味野菜も、南部ではにんにく(Toi)と青細ねぎ(Hanh La)か、紫色の小玉ねぎの様なハンティム(Hanh Tim)、赤唐辛子(Ot)を。北部ではしょうが(Gung)、しょうがよりも強烈な香りのナンキョウ(Rieng)、レモングラス(Sa)などを入れるので、南北で全く違った風味になります。
この料理、土鍋で食卓に登場しますが、土鍋の保温効果でいつまでもグツグツと魅力的な音をたて、熱々の煮魚が楽しめるのです。
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