<第十二回>
しじみの汁かけごはん [Com Hen]
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しじみの汁をかけて、よく混ぜて食べる。店によって具に工夫が |
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しじみ釜では、毎日夜中から早朝までの間に大量のしじみを蒸し煮にする |
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今回ご紹介するのは、私の好きなベトナム料理ベスト5に入る「コムヘン/Com Hen」(Com=ごはん、Hen=しじみ)です。中部のフエ(Hue)地方で朝食として庶民に愛されている料理で、朝フエの町を歩いていると、これを売る天秤屋台を見ることができます。
コムヘンは、小丼に白いごはんと刻んだ野菜(芋茎、バナナの花のつぼみ、スターフルーツ、コリアンダーなど)を盛り、その上に蒸したしじみのむき身、ピーナッツ、白ごま、豚皮をカリカリに揚げたものなどをのせ、しじみの蒸し汁スープをかけて食べます。味付けには、フエ特産のアミの発酵調味料「マムルォック/Mam Ruoc」、刻んだレモングラスと唐辛子のオイル炒めで、塩気と辛味を好みで付けます。
ただでさえデンプン質が少なくて軽いベトナムのご飯に、たっぷりの野菜が混じり、さらにしじみのスープがかかるので、お茶漬けの様にサラサラと食がすすみ、あっと言う間にペロリと1杯食べてしまえます。旨味の濃いしじみダシと旨味の凝縮したマムルォックのダブルの旨味が後を引く…。私がフエへ行った際は、1度に2杯食べてしまうことも珍しくありません。
この料理に入っているしじみのむき身は小指の先程もない大きさで、「こんなに小さなしじみを沢山、どうやってむいているのかな〜」と思い、以前フエで取材をした事がありました。調べてみると、フエの町中を流れるフーン(Huong)川には小さな中州の島コンヘン(Con Hen/Con=中州)があり、かつてよりこの島にはしじみに関する仕事をしている人々が住んでいるとか。しじみを捕る漁師、そして漁師の捕ったしじみを蒸し、蒸し汁とむき身を作って売る「しじみ釜/Lo Hen」(Lo=釜)と呼ばれる人々。何と、しじみのスープとむき身を作る、専門の仕事があるというのです。
さて、この「しじみ釜」ですが、どうやってしじみの身をむいているのでしょうか? 実は直径1mぐらいの大きな釜に、しじみと水を入れて、フタをして蒸し煮にします。蒸し汁は水を足してスープとし、蒸した身は大きなザルにいれ、水を張った大鉢の中で振り洗いするのです。しじみのお味噌汁を想像していただければわかる様に、火の通ったしじみの身は殻から外れやすく、振り洗いすることで、自然と身が殻から外れるのです。こういう仕事があるおかげで、フエの人達は毎朝しじみたっぷりのコムヘンが食べられるわけですね。
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