<第九回>
フーティウ [Hu Tieu]
|
|
|
|
豚ベースのスープで食べる汁ありの「フーティウヌック/Hu Tieu Nuoc」。スープは南部らしくかなり甘め |
|
|
|
|
|
甘じょっぱいタレであえて食べる汁無し「フーティウコー/Hu Tieu Kho」。スープは別添えで出てきます |
|
日本でも西と東で「うどん」、「そば」と、その地域でお馴染みの麺が異なる様に、ベトナムでも地域によって食べられる麺が異なります。ベトナムの麺として有名な「フォー/Pho」は、北部で生まれたもの。現在は全国区で食べられますが、その浸透の深さはやはり北部と南部で違いがあります。ご当地の北部ハノイでは、街のあちこちにフォーの屋台が出るなど、専門店以外の環境も充実しています。しかし南部では北の食べ物というイメージからか、あくまで専門店で食べるものといった雰囲気で、麺屋台となると別の種類の麺を売っていることの方が多いのです。
では北部の人にとってのフォーに匹敵する、南部の人々にお馴染みの麺とは何か? まず1番に「フーティウ/Hu Tieu」の名前が上がります。フーティウは豚肉をメインに、するめや干し海老などを合わせたスープで食べる米麺料理です。
麺はフォー同様、水に浸けた米をすりつぶし、薄くクレープ状に引き伸ばし蒸し、裁断して作ります。しかし、フーティウは製麺時にある工程をふむことで、柔らかなフォーの麺にはない「コシ」を持っています。その工程とは、麺生地を蒸した後に1度天日に干し、半乾きの状態にしてから裁断するのです。フォーにはないこの乾燥させる作業が、ゴムの様にしなやかな弾力、コシを生みだすのです。
このフーティウ、カンボジアの「クイティウ」がルーツと言われています。クイティウ、フーティウ。何だか響きが似ていますよね。いくつかあるフーティウの種類の中に、「フーティウナムヴァン/Hu Tieu Nam Van」(Nam Van=南蛮→南蛮風フーティウ)があります。ベトナムから見た南蛮とは、現在のカンボジア。つまりカンボジアの民族であるクメール人風の麺料理というわけです。
これは前述のスープに麺を入れて食べる「汁フーティウ/Hu Tieu Nuoc」(Nuoc=液体)の支流といえるのですが、スープを別盛りにし、タイやカンボジアで使われるような甘い醤油ベースのタレであえて食べる「汁なしフーティウ/Hu Tieu Kho」(Kho=乾いた)もあります。どちらも豚肉、豚ひき肉、内臓、海老などが入り具だくさん。生のもやしやニラ、春菊、チャイニーズセロリ、レタスなどをちぎって入れて混ぜて食べるのも特徴です。この他、もっとシンプルに豚肉だけを入れたフーティウもあります。街の屋台でも売られていて、こちらの方がより一般的な存在です。
|