<第七回>
雷魚の酸っぱいスープ [Canh Chua Ca Loc]
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いろいろな具材が入って彩りもきれいなカインチュアカーロック |
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雷魚。生きたまま売られている |
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ベトナムには「カインチュア/Canh Chua」(Canh=スープ、Chua=酸っぱい)と呼ばれる酸味のあるスープがあります。特にカインチュアと言う名でなくとも、酸味のあるスープはカインチュアの1種です。
ダシとなる食材は魚、海老、豚肉、鶏肉など様々で、酸味付けの食材も酢、米麹、タマリンド、トマト、スターフルーツ、パイナップル、サウ(Sau)と呼ばれる酸っぱい実、発酵させた筍のマンチュア(Mang Chua)、ラーヤン(La Gian)という酸味のある葉など、いろいろ。地方によって味付けが異なり、南部ではしっかりとした酸味と、それに負けないくらいのたっぷりの砂糖で甘味を付けます。一方北部では、酸っぱさを感じない程度にほんのりとした酸味で、甘味はつけません。少しばかりの酸味でスープの味を引き締め、ダシの旨味を引き立てるといった感じです。
今回は中でも南部のカインチュアの代表、「雷魚の酸っぱいスープ/カインチュアカーロック/Canh Chua Ca Loc」(Ca Loc=雷魚)をご紹介しましょう。こちらは南部のお袋の味とも言うべきポピュラーな料理。重要な素材が2つあり、1つは酸味付けのタマリンド(メー/Me)。タマリンドは豆科の植物で、アプリコットや梅の様な風味で、強い酸味があります。2つめはメインの具材で、ダシともなる淡水魚の雷魚。ナマズのようにつぶれた顔、黒い皮、分厚い鱗と見た目は非常にグロテスク。しかし、皮の下には淡泊でふっくら柔らかな白身がかくれています。
作り方は、まず下処理した雷魚の頭や、筒切りにした身を水といっしょに煮てダシを取ります。そこにトマトとパイナップルを加えて味を煮出し、さらにタマリンドを溶き入れて酸味付け。魚醤ヌックマムと砂糖を加え、甘酸っぱく塩気のきいた味に整え、芋茎、オクラ、もやしを加えて食感が残る程度にサッと煮て仕上げます。そして赤唐辛子ほか、ラウオム(Rau Om)やゴーガイ(Ngo Gai)、ラウクエ(Rau Que)といった香りの強い3種のハーブを刻んで載せれば出来上がり。
あっさりとした雷魚のダシ、タマリンドの強い酸味、砂糖の甘味、唐辛子の辛味、トマト、パイナップル、タマリンドのフルーティーな味わい、ハーブの爽やかさ…。何だかちぐはぐにも思えるけれど、年中暑い南部の気候では、これくらい様々な主張のある味の方が美味しく感じます。しっかりと甘く、酸っぱい味付けは、暑くてバテ気味な時でも食欲をそそるのです。
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