<第六回>
揚げ春巻き [Nem Ran / Cha Gio]
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北部風の揚げ春巻き。ハサミなどで切って盛り付けられる |
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ひと口大の揚げ春巻きは南部風 |
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サクッとした食感がおいしいベトナムの揚げ春巻き。ベトナムの南と北でその呼び名や大きさ、具材などが違うのをご存じでしたか?
ハノイなどの北部では「ネムザン/Nem Ran」(Nem=肉をミンチにしてまとめたもの、Ran=揚げる)と呼ばれ、一方ホーチミン市などの南部では「チャーヨー/Cha Gio」(Cha=肉や魚介のミンチを固めて調理したもの、Gio=肉をミンチにしてまとめ調理したもの)と、全く違う名前が付けられています。
また、春巻きの大きさも異なります。日本のベトナム料理店でよく見かける、親指大のひと口サイズの揚げ春巻きは南部風。北部風はそれよりも大きい中国の春巻きの様なサイズ。南部風はそのまま丸ごと盛り付けて食べるのですが、北部風はハサミなどでいくつかに切って盛り付けられます。
さらに具材にも違いがあります。南部風と北部風に共通しているのは、豚のひき肉を主材料に使うこと。叩いた海老や、カニのほぐし身を混ぜることもあります。北部ではこれに、きくらげ、春雨、炒って水気を飛ばしたもやし、刻んだにんじん、玉ねぎ、くずいもなどの野菜をたっぷり加え、肉が詰まった感じではなく、軽いホロっとした食感に仕上げます。対して南部風は、北部と同じくきくらげや春雨などを加えますが、刻んだタロ芋やくず芋も加えます。タロ芋を加えると、ほっくりとしながらもタロ芋のしっとり感が加わるのです。もちろん、配合や具材の種類は地域のほか、店や家庭で様々ですが、大方この様な違いが見られます。
揚げ春巻きは南北ともに、ヌックマム(Nuoc Mam)、砂糖、レモン汁を混ぜた甘酸っぱいタレにつけて食べますが、そのままごはんのおかず、ということはなく、生野菜やハーブ、米麺のブン(Bun)といっしょに食べたり、レタスにハーブと揚げ春巻きをのせて巻いてからタレに付けて食べたり、さらには揚げ春巻きを用いた麺料理として出される事もあります。たとえば北部では、揚げ春巻きと焼いた肉団子、豚バラ肉、生野菜、ハーブ、米麺のブンといっしょにヌックマムのタレにつけて食べる「ブンチャー/Bun Cha」というつけ麺。南部では米麺のブン(Bun)と揚げ春巻き、生野菜とハーブ、なますなどを盛り合わせ、ヌックマムのタレとあえて食べる「ブンチャーヨー/Bun Cha Gio」というあえ麺が代表的です。
ベトナム料理の定番とも呼べる揚げ春巻き、南北の違いに注目して食べてみるのも面白そうですね。
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