<第五回>
空芯菜のにんにく炒め [Rau Muong Xao Toi]
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炒めたての空心菜は鮮やかな緑と油の艶が美しい |
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市場では空心菜を裂いている姿を見ることも |
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シャキシャキとした食感、香ばしいにんにくの風味、魚醤と油の程よいコク…。シンプルなのにとびきりおいしいのが、この「空芯菜のにんにく炒め/ザウ・ムオン・サオ・トーイ/Rau Muong Xao Toi」(Rau Muong=空心菜、Xao=炒める、Toi=にんにく)です。たかが「青菜の炒め物」と侮ってはいけません。家庭だけでなく、食堂、レストランなどどこでも食べられる、非常にポピュラーな料理なのです。
この料理のメイン食材である「空芯菜」は、ベトナムではザウ・ムオン(南部ではラウ・ムーン)と呼ばれています。茎が空洞なことから中国では「空芯菜(コンシンツァイ)」、日本では「クウシンサイ」または「朝顔菜(アサガオナ)」、「 菜(ヨウサイ)」などと呼ばれ、また、ほうれん草よりも栄養価が高く、食物繊維も豊富で解毒作用があることから最近注目されています。
この空心菜、ヒルガオ科サツマイモ属の植物で、東南アジアが原産。暑さに強く、湿地、水辺に生え、成長も非常に早いとか。さらにベトナムの気候や土地は、空芯菜の生育条件に合っているため、たくさん採れます。そこで、栄養価が高く非常に安価な「経済的野菜」として、全土でよく食べられる、ベトナムを代表する野菜なのです。
ベトナムでは、この空心菜はシンプルに茹でて魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)や大豆醤油に付けて食べたり、あえ物にしたり、茎を裂いて生のまま麺料理の具材としたり、鍋やスープに入れ煮て食べたりします。その中でも家庭のおかずとしてはもちろん、あらゆるレストラン、食堂で登場する人気の食べ方が、このにんにく炒めなのです。
作り方は、空心菜とにんにくを油で炒め、ヌックマムと砂糖、こしょうなどで味付けするだけ。非常にシンプルなのですが、だからこそ美味しく作るために空心菜の扱い方にポイントがあるのです。
空心菜の葉は加熱すると、ヌメリや水分が出るので、全部入れてしまうと、せっかくのシャキシャキとした茎の食感が台無しになってしまいます。そこで、葉は半分ぐらい間引いてしまいます。中には葉を全部取り、茎だけ炒めるお店もあります。そして、火の通し具合も重要。茎と葉をいっしょに入れてしまうと、葉の方が早く火が通るので、最初に茎と葉を分け、時間差で茎、葉の順に加えて炒めるのです。また、アクが強い野菜なので、加熱して時間が経つと、色が黒ずんできます。炒めたらすぐに食べる様にしましょう。
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