<第四回>
バインセオ [Banh Xeo]
|
|
|
|
|
|
|
(上)バインセオは薄くパリッとした食感が命 (下)たこ焼きの様なひと口大のバインコット |
|
「ベトナム風お好み焼き」という名で紹介されるこの「バインセオ/Banh Xeo」。実はお好み焼きとは似ても似つかず、パリパリでクリスピー。米粉にココナッツミルクと水を加えて作った生地は、ターメリック入りで黄色いのが特徴です。
焼き方が面白く、油を熱した底の丸い中華鍋で少量の豚肉と海老を炒め、その中に生地を流し入れて手早く鍋を回しながら薄く大きく広げます。そこにもやしや蒸した緑豆などをのせ、蓋をしてサッと蒸します。多めの油を注いで高温で調理するので、生地がパリッと揚げ焼き状態になるのです。最後にこれを半分に折ると出来上がり。
食べ方は適当な大きさに切り、リーフレタスやからし菜にのせ、大葉やドクダミ、バジルなどの香草とともに巻き、タレに付けて食べます。タレは魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)とレモン汁(または酢)、砂糖を混ぜた甘酸っぱいもの。青パパイヤとにんじんの甘酢漬けを入れたり、添えたりして食べます。たっぷりの野菜やハーブ、爽やかなタレと合わせることで、油で焼き揚げた生地もサッパリと食べられるのです。
このバインセオ、ホーチミン市や、日本のベトナム料理店などで食べられる大判タイプのものは、実はベトナム南部風。地域が変わるとその土地に合わせて、姿や味が変化します。たとえばファンティエット(Phan Thiet)やムイネー(Mui Ne)では、ターメリックを使わない白いものがあり、小さめの手の平サイズで、漁師町らしくイカが入っていたりします。ホイアン(Hoi An)などの中部も手の平大。これを野菜やハーブだけでなく、ライスペーパーで包んで食べます。タレはこの地方の味噌を使った味噌ダレです。また、「バインコアイ/Banh Khoai」と呼ばれる厚焼き生地のフエ風バインセオは、肉団子などがのり、半分に折らないオープン状のもの。タレは、「ヌックレオ/Nuoc Leo」と呼ばれる肉味噌ダレ。メコンデルタやヴンタウ(Vung Tau)などでは、ひと口サイズの「バインコット/Banh Khot」もあります。
ところで、ハノイのガイドさんから「『バインセオが食べたい』というお客さんが多くて…」と愚痴られたことがあります。もともとベトナム北部では、バインセオを食べる習慣がありません。最近は地方の食べ物も人気で、専門店もできてきましたが、ハノイでバインセオを食べるのは、大阪でもんじゃ焼を食べたい、というようなことなのかも。それほど日本人にとって、バインセオは人気なのですね。
|