<第三回>
フォー [Pho] -その2-
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
(上)「フォークオン」生春巻きよりもプルプルとした食感/(中)専用蒸し器で生地を蒸し、粗熱を取ってから裁断する/(下)フォーの生麺。サッと熱湯で温めればすぐに食べられる |
|
ベトナムの米麺「フォー/Pho」、前号ではスープや具材について触れましたが、今回は「麺」のお話をしましょう。
簡単に言えば、フォーとは、蒸して作った薄い米生地を幅広に切った麺。柔らかく蒸した生地を切るわけですから、日本の乾麺の様な「コシ」はありません。ベトナム人はむしろ、この絹のようにしなやかで、柔らかな食感を楽しむのです。
まずは原料であるお米をたっぷりの水に漬けます。次に柔らかくなったお米を機械で粉砕、水を加えて程良いかたさの生地にします。その後、鍋の口に布をピンと張った専用の蒸し器の上に生地を適量のせ、専用のおたまの裏を使って生地を薄く引き伸ばしていきます。蓋をして蒸すこと数十秒、生地に火が通るとプルプルとした状態になり、これを冷まして幅広に裁断すれば、フォーの麺「バインフォー/Banh Pho」(Banh=粉などから作る生地を加工したものの総称)の完成です。
この麺は日持ちがしないので、製麺屋では常にその日の作りたての麺が売られ、その日のうちに食べ切ってしまいます。日本で出回っているような乾麺のフォーは、現地では製麺所のない辺ぴな場所で食べられることはありますが、生麺(乾麺でないという意味)のフォーを食べるのが普通です。
また、フォーとは作る店やサイズ、厚さ、生地の配合が異なりますが、蒸したプルプルの米生地を切らず、炒めたひき肉などの具をのせて巻いて食べれば蒸し春巻き「バインクオン/Banh Cuon」(Cuon=巻く)、蒸した米生地を天日に干せばライスペーパー「バインチャン/Banh Trang(南部弁)」(Trang=引き伸ばす)となります。
ところでこのバインフォー、牛または鶏のダシで食べるか、油で揚げ焼きにするのが昔からの食べ方ですが、フォーの本場のハノイでは、数年前から面白いフォー料理が流行っています。その名も巻きフォー「フォークオン/Pho Cuon」。「どんな料理?」と最初に名前を聞いた時は思いましたが、現物を見て「こうきたか〜」と納得。蒸したフォー生地を裁断せずに四角くカット。炒めた牛肉や香草をそれで巻いて、魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)ベースのタレに付けて食べるのです。ハノイでは、市中心部の北側、チュオックバック(Truoc Bac)湖畔のグーサー(Ngu Xa)通り周辺に専門店が軒を連ねています。ベトナムを訪れた時は、昔ながらの生麺フォー、最近流行のフォー、どちらもチェックしてみて下さいね。
|