<第一回>
生春巻き [Goi Cuon]
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(上)伝統的な生春巻。海老、豚、ブン、ハーブ類を中に入れ、巻き、飾りにニラを外に出して巻く (下)高級レストランのスモークサーモンの生春巻。ワインといっしょに食べてみてと薦められた |
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生春巻きは、「ゴイクォン/Goi Cuon」と呼ばれるベトナム南部の料理。ベトナム語で「Goi=あえもの」、「Cuon=巻く」を意味し、お米から作られるライスペーパーで、ミント、バジル、しそなどのハーブと、レタスやもやしなどの生野菜、そしてゆで豚、ゆで海老、米麺のブン(Bun)を巻いて作ります。「具やタレにどんな種類があるの?」とよく聞かれますが、伝統的な具材はこれが定番。タレは中国の甜麺醤(テンメンジャン)に似た甘い大豆味噌を油で炒めたにんにくや砂糖などと合わせ、すりつぶした緑豆やピーナッツなどを加えてコクをプラス。さらにタマリンドの汁やお酢などを極少量加え、味をキリッと締めて作ります。お店や家によって秘伝の材料や配合があるようです。
ライスペーパーは春巻き用と思っている人もいますが、ベトナムには元々、ライスペーパーに肉や魚の料理とブン、ハーブや生野菜をのせ、卓上で手巻きにする食べ方があります。実はこちらが本来の方法なのですが、1回ずつ手で巻くため、時間のある時にしか食べられません。そこでスピーディーに食べられるよう、あらかじめ巻き置くスタイルの「生春巻」が生まれたのです。
つまり、生春巻きはファーストフード。現地では屋台や市場、学生が立ち寄るおやつのお店などで売られています。しかし見た目の珍しさから、外国に紹介される機会も多く、ベトナムの外国人観光客向けのレストランに置かれるようになりました。日本でもベトナム料理店の定番メニューとなっているので、高級料理と思っている人も多いのではないでしょうか。
ところが最近では、ベトナムの外国人向けレストランに、ベトナム人客が多く来店するようになってきました。これらのお店の中には、具にスモークサーモンや生魚を使ったり、マヨネーズをソースに使ったりした、ちょっと変わった生春巻きを置く店も出てきました。つまり、食べ慣れた味を好むベトナム人もまた、シェフがもたらす新しい味を受け入れ始めたのです。しかしこれらの多くは日本で食べたことのあるアレンジ…。そう、日本の生春巻きはベトナムの最先端を行っていたことになりますね。伝統的な味、新しい味、どちらもおすすめですが、これらのことを知っていれば、より生春巻きが味わい深くなるかも知れません。
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