2011.07.28

本当に古いベトナムの建もの

本当に古いベトナムの建もの 歴史の重みを感じさせる街並みが観光客に人気のハノイ旧市街。その建物のほとんどは20世紀半ば、仏領時代以降に建てられたものだ。1000年の歴史を誇るハノイとその周辺地域には、もっと古い建造物がたくさんある。そんな建物を求めて、旅に出てみた。
監修:飛田ちづる(筑波大学大学院博士後期課程)、撮影:西澤智子 ※本記事内の築年数は全て、口頭伝承や建築様式、建築部材への銘などから推測された年数です

飛田ちづるハノイ近郊は古建築の宝庫

古い建物が多く残るベトナム北部。郊外の小さな村でも、歴史の重みを感じさせる重厚な木造建築に出会える。特に、村のシンボルである集会所「ディン/Dinh/亭」に、立派な建築が見られることが多い。

中国の影響を受けた建築様式?

ベトナムには多くの歴史的建造物がある。これらは他の東アジアの国と同様に、中国の影響を受けたとみられるが、はっきりしたことは分かっていない。郊外の古い家屋は、街中でよく見かける間口が狭く奥行きのある建物とは異なり、庭や池、井戸のあることが多い。 個人の住宅に限っていえば、その造りは北部と中部以南に大別され、古い建物は多く北部に残る。中部以南では、生活の近代化が北部より急激に進んだうえ、ベトナム戦争時に破壊されて廃墟と化した村が多かったのではないだろうか。そのため古い建物が少ないと考えられるが、推測の域を出ない。

「ディン」は村の象徴

北部の家屋は、日本で「切妻」といわれる、1枚の紙を2つに折ったような屋根が多い。中央に大きな部屋があり、真ん中に先祖を祀る祭壇を据え、両脇を接客空間として使う。さらに、左右に1部屋ずつある造りがほとんどだ。 村で最も古く立派な建物は、ディンであることが多い。集会所や祭礼の場であり、集落の象徴として造られるため、通常の家屋と比べて規模が大きいのだ。住宅と似た造りだが、板張りの床が高く、舞台のようでもある。ディンを訪ねてぶらぶら歩き、すれ違う人に挨拶をしながら村の暮らしぶりを味わうのも、郊外の楽しみ方のひとつだろう。 (文/飛田ちづる)
飛田ちづる 筑波大学大学院修士課程で、茨城県の古民家調査や中国北京の四合院調査に従事。2007年からベトナムの研究プロジェクトに参加。現在、同大学院博士後期課程にて、文化財保護を目的とした国際協力をテーマに研究中。